2011年12月20日火曜日

農業へのインパクトの評価方法 ~ProbableとPossibleの違い~

農業は今後予想される地球規模の環境変化から一番被害を受けるセクターの一つと言われています。インドネシアの政策レポートを読んでも、農業に関する政策提言が一番多いです。これらの政策は、学術的なインパクト評価方法に基づいて試算されることが望ましい。

しかし、全ての評価方法は何らかの欠点があるだろう。さらに、その評価方法が使っているモデルも、モデルが正しく機能する限定条件があるだろう。その事を考えながら、代表的な評価方法をリストしてみる。


生産関数(Production function)
このアプローチでは、異なった気候条件の下で、異なる作物の収量を生産関数を使って検討します。このアプローチでは作物が変化する気候に適応しない事と、作物の選択を含む土地の使われ方選択が無いことを、前提としています。その為、変化する気候条件の農業の利点をモデルは過小評価することになります。

第2前提の作物の選択を考えない事は、かなりの過小評価でしょう。例えば、インドネシアに農家に話を聞くと、「水が足りないから、稲作からココア栽培」にしたとか、「農業には向かないから、土地を売って住宅が建った」との話が聞かれます。ココア栽培に転作するすることにより、農家は利益が削減するばかりか、収入が増加した可能性が高いです。生産関数アプローチでは、ここの収入の増加を見ることはむりです。


農業ー経済モデル(Agronomic-economic model)
農業ー経済モデルは、複数の組み合わせから、農業へのインパクトを評価します。温度や降水などの生産関数により農業モデリングを作り、それを経済モデリングにインプットします。経済モデルでは、作物の選択は市場価格を考慮することにより、より現実的な作物の収量に影響を予測することができるであろうと思われます。

どこまで、モデルを複雑にするかは議論されるところですが、気候変動等への適応を考慮しないと上の生産関数の様に、利点を過小評価することになります。ただ、いままで起こった事が無い、変化に対しての作物や農民の適応をモデル化するのは難しい所です。


農業―生態系地域モデル(Agro-ecological zoning)
このゾーニング(地域)と言われる手法では、土壌、地形、気候の特徴の組み合わせにより「ゾーン」を定義します。各ゾーンには、土地利用のための制約とポテンシャルの組み合わせをそれぞれ持っており、土地が利用されているかどうか分析することができます。さらに、この基本的なゾーニングに、土地保有、土地の利用、人口や家畜の密度、インフラ設備を付け加えることにより、土地利用計画を議論する事ができます。

http://www.fao.org/docrep/W2962E/w2962e-03.htm




他のアプローチと同様に、このアプローチも適応を農民や生態系の適応能力を加味しないと、利益を過小評価することになります。

つまり、モデルは「一番起こりえる将来を予測(Probable)」表している様に見えるけど、実は「限定された条件下での最大の可能性(Possible/Feasible)」を表しているだけだったりします。後者が問題だというのではなく、「限定している条件」が何であるか見極めて、モデルを使用することが大事であると思います。

日本語だと、ProbableもPossibleも同じく可能性と訳されますが、中身は全然違います。お気をつけ下さい。