2012年5月29日火曜日

バリ島の斜面を見て、質的分析と量的分析の違いを知る ~ 2つの正確性:「物事を正しく示す=Accurate」と「物事をぼやかさずに示す=Precise」 ~

土地が稲作に対して適切かどうかは、水がどれぐらい豊富、土壌のタイプはどうなのか、勾配は急なのか調べるのが、定説となっている。例えば、FAOはStep 5. Evaluate land suitabilityはこの様な決定条件を持っている。

そこで、バリ島の土地がどれぐらい急なのか見てみたら「正確性に関する質的分析と量的分析の特徴」を思いついたので書いてみる。基本的に傾斜が急な場合であっても、水の可用性が高く、ベンチテラス(段々畑)が構築されるのなら、その土地は水田稲作に適しているといえます。しかし、急な斜面は浸食のリスクが高く、設置コストより高くなります。したがって、平坦な土地は、水稲栽培に最も適しており、適合性は、斜面は非常に険しい場合非常に低くなります。

稲作地の適合性を見るために、斜面に関する図を見てみました。

バリ島の斜面を測定した地図が2つあります。下記のどちらの地図も赤い所は、斜面が急で、緑がそこそこ急で、他の場所は平地で有る事を示しています。


図1


図2


図を見比べると結果がかなり違いますよね。図1では、への字に傾斜の強い場所があり、他は殆ど平地です。図2では、適度の傾斜が強いところが多いです。

実際はこんな感じです。バリの中央にへの字に山脈があるのがわかります。

図3


「傾斜の強い」か「適度に強い」は、スケールの違いからかもしれませんが、図2では、平地を判断されたところが、斜面の間にあり不自然な感じがします。


図1は村ごとに、「あなたの村の傾斜はどうですか」と聞いた質的な調査方法よって作られております。図2は斜度を器具を使って量的にサンプルして作られております。

知覚や経験からは、人間は平均や全体のトレンドを認識する能力は優れており、質的な分析方法だと「ぼやけている」かもしれませんが、「大体この村が斜面にあるのかどうか」判断することが出来ます。


量的な分析は、きちんと行えば「正確な斜面の量」が出るのですが、そのサンプルがその土地の平均するような値でなければ、「間違った代表」になってしまします。

正確とは、このブログでも何度か書いていますが、「物事を正しく示す=Accurate」「物事をぼやかさずに示す=Precise」の2つがあります。


今回の場合、図1の質的な分析のだと、「斜度は37度」などと「物事をぼやかさずに示す」事ができなかったかもしれませんが、どの地域の傾斜が強いかと「正しく示した」とおもいます。

一方、図2の量的な分析ですと、「斜度は37度」と言い切れたかもしれませんが、図3と比べるとそれが正しいとは思えません。

今回のケースでは、途上国での調査の特徴や予算の都合の為、質的な分析のほうが優れていたといえると思いますが、全てのケースでこの様ではありません。調査のタイミングや場所によって、分析方法は選ぶべきでしょう。これは又別の機会で話します。

最後に、実際の水田稲作地の地図を貼っておきます。ピンク色が稲作地を示しています。降雨量や土壌を考慮しなくても、水田の稲作地が平地に集中していることがわかります。傾斜は稲作地を決める重要な要因なんですね。