2014年1月13日月曜日

映画評:「マーヴェリックス/波に魅せられた男たち [DVD]」 ~「乗るか乗らないか」、「落ちるか落ちないか」、もしくは「生きるか死ぬか」の純粋な二者択一の世界~





20年前の、あのオーストラリアの自転車一周の後に、少し古い英語のサーファー・マガジンを紀伊國屋で買って来て、英語の勉強にテキストにしていた。その時、このバカでかいマーベリックスの波からワイプアウトする写真を見た。もしかした、まだこの雑誌は自転車日記が収まっていた書棚にまだあるかも知れない。



「ジェイのように生きろ(Live like Jay)」もカリフォルニアでサーファーの合言葉になっているとも、聞いたことがある。


しかし、それがこの映画「マーヴェリックス/波に魅せられた男たち(原題: Chasing Mavericks)」のジェイ・モリアリティであるとは、映画の最後の30分まで気付かなかった。





  マーヴェリックス/波に魅せられた男たち [DVD]


この映画はカリフォルニアに実際に存在するマーベリックスという大波がまだ一部のサーファーにしか知られていなかった時代に、高校生のジェイがその波に挑戦するスポ根映画であり、家族愛や友情をおりからめた青春ストーリーでもある。

奥さんも「うるっと涙ぐんでしまった」っと言っていたので、サーフィンしない人でも、甘酸っぱい青春スポーツ映画として楽しめるはずだ。しかし、僕は自分の経験と重ねて、心臓バクバクの純粋なサーフィン映画として引き込まれた。

普通のサーフィンは波の上をキャンパスとして弧を描くスポーツであるが、映画でジェイの師匠のフロスティが云うのように、大波のサーフィンはサバイバルを突き詰めるライフスタイルだと思う。大波に乗る時には、「乗るか乗らないか」、「落ちるか落ちないか」、もしくは「生きるか死ぬか」の純粋な二者択一の世界だ。

僕はマーベリックスの様な波には乗ったことは無いが、ビッグウェーブ(大波)サーフィンはどのレベルのサーファーでも語れることだ。初心者には、1フィート(30cm)の波でもビッグウェーブで、「生きるか死ぬか」の二者択一でサーフィンをしている。もう少しうまくなれば、波の上で曲がることが出来るようになるが、身長より大きい波になると、とにかく乗って、落ちないように、低く、速く波と対峙するすることになる。



これが昨年私が乗って写真に残っている一番大きい波だ。



この時の事は良く覚えている。この時は、二者択一の思いだけで雑念は全く無い。私はこの感覚がたまらなく好きだ。真の自由とはこの瞬間だと思う。恐怖心で心がいっぱいになり、それを乗り越える為に全力で頭を回し、最善のポジションを決める。後は、腹をくくって全力でスピードを付けて波に乗る。最後に、ビビると絶対に乗れない。これを書いているだけで、冷や汗が滲んてくる。

恐怖心は、必ずそこにあるというか、なくてはならない。





映画では、フロスティが「恐怖は健康的だが、パニックが致命的だ(fear is healthy; panic is deadly)」とジェイに話す。この映画は、ジェイが恐怖を乗り越える為に、フロスティが「肉体、知力、感情、精神」のトレーニングを課す。肉体や知力があれば、恐怖心は和らぐ。しかし完全に恐怖心がなくなってしまったら、それはビックウェーブ・サーフィンではなくなるという矛盾が生じる。波の大きさに関係なく、「出来るか出来ないか」の二者択一のぎりぎりの能力で行うことが、僕の中のビッグウェーブ・サーフィンだ。7歳の息子には3フィートの波は大波だが、私にはただの楽しい波だ。最後の恐怖心は感情と精神をコントロールして乗り越えるしかない。そうでなければ、それはビッグウェーブ・サーフィンではない。

ジェイはマーベリックスに挑戦する前夜に、フロスティに言われた最後の課題をこなすことで、恐怖心を乗り越えている。

「低く構えて、ただ、ただ、突き抜けることが出来る事を信じる」生き方が好きな人には共感できる映画だとおもいますよ。

Stay low and go fast!












  マーヴェリックス/波に魅せられた男たち [DVD]