2012年4月15日日曜日

書評:何があなたを仏教徒にさせないか?~ What Makes You Not a Buddhist~

2月にインドに行った時に、チベット系インド人のスタンジンにこの本をもらった。


What Makes You Not a Buddhist
What Makes You Not a Buddhist
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Dzongsar Jamyang Khyentse
Shambhala (2008-08-12)
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この著者はインド系のアメリカ人で、欧米で既に活躍されているお坊さんである為、英語が達者である。その為、現代のポップ・カルチャーの例を上げながら、仏教が何かを軽く説明している。
軽く説明をしているといっても、タイトル通り、「何をなせていたら仏教徒か」を章ごとにきちんと話している。そして、ここで説いている仏教とは「お釈迦様が見つけて真実」であり、その後宗教として発展した仏教ではない。この本でも、仏教は宗教では無いとしている。

この本によると、下記の4点の一つでも同意できなかれば、その人は仏教徒ではないとしている。
  1. All compounded things are impermanent. 
  2. All emotions are pain. 
  3. All things have no inherent existence. 
  4. Nirvana is beyond concepts


直訳するとこんなところでしょうか?
  1. すべての複合物は一時的である。
  2. すべての感情が苦痛である。
  3. すべてのものには固有の存在しない。
  4. 極楽(悟り)は概念を超えています


意訳するとこんなところですかね?
  1. 形があるものはいつか壊れる。
  2. 感情の捕らわれていると辛い。
  3. この世の中に変わらないものなど存在しない。
  4. 苦しみの原点は、国、文化、宗教に影響されない。


この本はこの4つの項目に付いて書かれているだけであり、一切禅や瞑想の方法については触れていない。この4項目が仏教では真実であり、これがあるから最終的な真実につながるのである。つまり、「自分を捨てることが、苦しみから逃れる」事である。

多分この4つの中で、2番目の「すべての感情が苦痛である」が一番受け入れがたい項目であろう。うれしい感情が何故辛いのかと。詳しくは本を読んでもらいたいが、すべての感情は、自己にしがみついているという意味では利己主義から生まれている。その為、それでは自分を捨て切れない。だから、苦しみの原点から離脱出来無いことを意味する。つまり、悟りは開けないとなる。

それから、この本で興味深かったのは、何故、仏教徒は他人に優しかったり、菜食主義者であったりするかの記載である。キリスト教では、「博愛」により他人に優しくなる。倫理が行動の原点である。しかし、お釈迦様の仏教は宗教ではないので、倫理により「他人に優しかったり、菜食主義者」であるわけではない。

例えば、「肉を食べる」とは、「他の命を摂ってまで、自分を長生きさせよう」とする「自己にしがみついている」行為であり、仏教の真実に反する。また、「自己にしがみついていないのなら」、自分の物に執着する必要もないので、「他人に物を分け与える」事にも苦痛は存在しない。

とにかく、英語が読める人や、宗教の色が無いお釈迦様が見出した仏教を覗いてみたい人には、良い本です。

これは本の中に書いてあったお釈迦様の仏教を記載した書評です。日本の仏教が宗教でないとは言っていないので、お坊さん怒らないでくださいね。だれか、日本語に翻訳すればいいのにね。

2012年2月23日木曜日

インドに行って来ました4。~太陽エネルギーを使ったランプビジネス~





昨日のコンロの見学の後に、今度は太陽エネルギーを使ったランプビジネスを見てきました。この村には電気が通っていません。

そこで村人たちは電気ランプをこのプロジェクトから借ります。料金は一日5リラ。







電気は太陽パネルを使って充電します。太陽パネルの横で肥料になる牛の糞が干してあるのが面白かったです。


村の全景

数年前までは、国際機関が似たようなプロジェクトと東南アジアで行ったが上手くいかなかったとの話を聞いた。しかし、太陽パネル、LEDランプ、バッテリーの値段が下がりこのようなプロジェクトに採算が合うようになってきた。近所の商店でも灯油を使ったランプを一日5リラで貸している。経済的には上手く張り合っている。そして、灯油と違い火事になる危険もないし、匂いもない。同じ立場なら僕もこの電気ランプをかりるだろう。


そして、今度は街に出た。




この街には今話題のスーパー・グリッドの対局であるマイクロ・グリッドがある。電力はソーラーパネルでと発電機を併用している。





このお店は一日6リラ支払いマイクロ・グリッドから電気を調達している。


シバ神だそうです。



 美味しそうなお菓子が並んでいましたが、僕には甘すぎの気がします。



スタンジンは僕を未だに師と仰ぐが、仏教の話になると彼はグルとなる。





ちょっと前まで、太陽エネルギーは高すぎると言われていましたが、こんな田舎でも採算があるビジネスが成り立とうとしています。太陽エネルギーは小さく発電できるので、大掛かりな送電線を引くより必要最小限の電力を自前で発電するのにも良いです。


インドの話はとりあえず今回でおしまいにします。

また、不定期更新に戻ると思います。

2012年2月22日水曜日

インドに行って来ました3。~インドのクリーンな調理コンロの現状~



インドに行ったもう一つの理由は、インドのクリーン・コンロの現状を見てみたかったからです。人間の行動分析をするのが好きなので、気候変動の適応策が好きです。同じように行動分析の一環から途上国の調理コンロの購買分析も好きなわけです。

クリーンな調理コンロとバイオマス燃料については、数年前のブログにその事を書いていますので、今回は詳しくは書きません「2008-04-02 アフリカのバイオエナジー(バイオ燃料)事情 」。



英語が読める方ならBoiling Point.に掲載されたこの記事をお読みください。



原始的なバイオマス・コンロからクリーンはコンロに移行よって得られる利点はたくさんあります。


  1. 森林伐採の削減。
  2. 気候変動・温暖化への対策。
  3. 屋内の空気汚染の削減。

コンロの仕組みを変えるだけで、燃料効率があがり、薪を多く使わなくてもよくなり、森林伐採の削減を助け、気候変動・温暖化への対策になります。そして、燃焼が良いということは、排気もよくなり屋内の空気汚染の削減になります。バイオマス・コンロの排気から肺炎になって亡くなる人は世界で年間150万人居ると言われています。これは、マラリアとHIVで亡くなる人を合わせた数より多いです。


利点が沢山あるのになぜ移行しないのか?それを調べることに興味があります。


インドに舞台を戻します。まずIPCCのパチャウリ議長が所属することで有名なTERI - The Energy and Resources Instituteで私がアフリカで行ったクリーンコンロとバイオ燃料のプロジェクトをプレゼンしました。







そのまま空港に向かって、TERIの長年のフィールドであるLocknewに向かいました。デリからの飛行機の一時間の街は輝いていましたが、そこから車で南に走れば薪などのバイオマスを使った調理コンロが主流の村になります。

インドのタクシーは恐ろしいです。絶対死ぬと思いました。







今回の旅に同行したのは、ストックホルムのフランシスとインド人のスタンジン。



フランスは一緒にアフリカのプロジェクトを行った同僚です。








スタンジンはオックスフォードで私が指導したインド人の留学生。













僕らはまず、TERIが普及活動を行っている既存の七輪のようなコンロに小型の扇風機をつけた物を見学した。ファンをつける事で30%以上の効率化を達成している。一番安いので、20ドルでステンレス製になると50ドルです。











それから、このコンロを実際使っている家庭を訪ねてきました。子供にも安心安全なコンロです。







写真の彼女のコンロがピカピカなのは、兄弟が古いのを持っていったからです。そして、近所の人も使っています。これは皆が良いことを分かっているので、普及に関して良いサインですね。











先程、彼女のステンレスのコンロは50ドルとしたが、バッテリーはもう少し高いだろうし、電気の部分の信頼性が普及の問題だろうと思います。電気はソーラーパネルから充電しています。






皆でチャイをごちそうになりました。











隣には、LPガスのコンロと昔のコンロがありました。昔のコンロはほとんど使われていないようですが、LPガスのコンロは今もキッチンの中心に構えています。その定位置がいつかこのクリーンコンロによって置き換えられるのでしょうか?



クリーンコンロを使うと、半年のLPガスの消費を抑える事ができるので、購入費のリターンは1年から2年と言われています。それでも、LPガスの使用がなくなることは当分無いでしょう。それは、「急いでいる時は、LPガスでそれ以外は薪」と使い方を分けているからです。


このように新しいコンロを購入しても古いコンロを使い続ける状況が広く見受けられます。燃料が移り変わるFuel ladder(燃料の階段)に対応してFuel stack(燃料の積み上げ)と呼んでいます。


明日は太陽エネルギーを使ったランプビジネスを紹介します。

2012年2月21日火曜日

インドに行って来ました2。~セキュリティー問題と気候変動適応策~



インドの行った理由はAsian Security Conferenceから招待されたから。上の写真でもプレゼンをしております。休暇扱いにして行きましたが、アカデミックな刺激を浴びてリフレッシュすることができて良い機会でした。


その中でも、一番よかったと思った発表がCleo Paskal博士の「Environmental Change -- A Very Traditional Threat 」。環境変化、特に気候変動をセキュリティーの観点から議論しています。





気候変動適応策は良く「開発問題」と「災害削減」の観点から議論されます。Cleo Paskal氏のセキュリティーからの議論は「災害削減」の観点からと考えてよいでしょう。

彼女は、気候変動は昔ながらのセキュリティーであると位置づけています。昔からセキュリティーや防御のコンセプトは周りの「環境が変化しない」事を前提に作らている。しかし、現実には環境は変化し続けています。例えば、最近空港が洪水で使えなくなることが多々あります。ペンシルベニア、マサチューセッツ、バンコク、クイーンズランド州の空港が昨年洪水で閉鎖しました。その為、環境変化はそれほど強調されていなかったが、戦争や行動計画に昔から取り入れられています。つまり、環境変化や気候変動は普通の事なので、それを取り入れていないことが間違いであると言えるでしょう。


彼女は環境変化とセキュリティー問題の例を2つあげています。一つは「小島が領土を定義していた場合、その小島が消えたらどうなるだろうか」の話。この話は冗談ではない。特に日本、中国、インドの周辺では起こっている話しである。モルディブがもし消え失せたら、モルディブは国として成り立つのだろうか?日本の南の小島が消えたら、日本の領土は縮小するのだろうか?

海面上昇の影響は非常に限定的とされている。影響も突発的なものでないため、徐々に対応すれば良いと考えられている。しかし、島がまるごとなくなると話は違ってくる。そして、これが一番可能性がある海面上昇の問題であると思う。

もう一つの例が、北極海の領土の問題。北極周辺の温度が上がれば、永久凍土が溶けて、北極海航路が開く。永久凍土石油のパイプラインが機能しなくなるのと同じく、北極海航路から石油を輸出できるようになる。

興味深いプレゼンテーションです。お勧めです。


ついでに、僕のプレゼンテーションも貼っておきます。興味がある人は見てください。脆弱性評価のターゲットを決める方法について話しています。英語での生活に不自由はありませんが、いつまで経っても発音が下手なのがバレバレです。機会があったら今度説明してみます。


Food Security and Climate Change Vulnerability in Indonesia/Bali - Takeshi Takama




明日は、インドに行ったもう一つの理由であるインドのクリーンコンロの現状について書いてみます。

2012年2月20日月曜日

インドに行って来ました1。~なかなかインドに行けませんでした~



いろんな国に行ったが、僕にとってインドは特別な存在だった。20年前に、インドにバックパッカーをしに行くつもりだった。しかし、読みかけのインドの本を電車の中に忘れたのをきっかけに熱が覚めてしまい、オーストラリアの自転車一周旅行に変更した。

それから、数年前もインドの学会に招待されたが、ダブルプッキングでキャンセルせざるを得なかった。インドネシアに来る前はアフリカか欧州のプロジェクトが多く、インドの事はその後忘れてしまっていた。

そして、数カ月前に、Asian Security Conferenceから招待のメールをもらった。




今年は「従来型でない安全」と興味深いテーマだったので、招待を受けることにした。今度こそ、インドにいけるとワクワクだ。コンフェレンスでは、インドネシアで取り組んでいるプロジェクトを紹介するつもりでいたが、インドのInstitute for Defence Studies and Analyses (IDSA)が渡航費を全て払ってくれるとの事だったので、今回の渡航は休暇扱いにした。


しかし、インドに行きに飛行機に乗るのはそんなに容易ではなかった。


日本人はインドへの短期間渡航では、インドの空港でビザを取得することが出来る。その為、事前にビザを取得しなかった。当日、空港に行き、チェックインカウンターに荷物とパスポートを差し出す。しかし、なかなかプロセスされない。


少しして、「ビザが無いから載せられない」と回答が来る。


何度も、「日本人はインドの空港でビザを取得できる」と説明しても、「インドの領事館が閉まっているから確認できないので、のせられない」との回答だった。2時間粘ったがダメだった。


諦めて家に帰って、落ち着いてから、コンフェレンスの担当者に「申し訳ございませんが、飛行機に乗れませんでしたので発表できません」とメールを送る。当時インドは日曜日の朝、しかし、担当から直ぐにメールと電話で返事が来た。

「どんな方法で、いくら掛かっても良いから、とにかくインドに来てください」

そこまで言われたので、もう一度チャレンジすることにした。何度も航空会社に電話しても、電話をピックアップしてくれない。 これではどうにもならないの空港にもう一度行った。空港の航空会社オフィスも全て閉まっている。ダメ元で、チケットが無いままチェックインカウンターまで通してもらい、別の航空会社と直接やり取りした。そしたら、なんの問題もなく新たにチケットの購入が出来、飛行機に搭乗する事ができた。最初に受け取ったチケットは某途上国の航空会社であったため、態度が緩慢でこちらのリクエストを無視してビザが必要かどうか確認さえしくてくれなかった。2つ目の航空会社は先進国の航空会社で、電話一本でビザがいらない事を確認した。招待してくれたインドの機関には余計なコストになってしまったが、それでもコンフェレンスが始まる3時間前にインドに到着することができた。



下のリンクを読めば、日本人は空港でビザを取得することが出来るのはあきらかです。




インドでの滞在中はカレーばかりを食べていましたが、全く飽きることはありませんでした。朝は朝のサッパリ系のカレー。米粉で作られたパンです。



昼は青空の下でカレー。パンはナンだけでは無いことを知りました。ナンはこうやって焼くんですね。





夜は夜空の下でカレー。大学の先生から、元大統領まで来ていました。



あまり時間がありませんでしたが、観光も少ししました。

輝いていないタジ・マハールのような、フマユーン廟




でっかい塔のクトゥブ・ミーナール




迷宮で迷いそうなBara Imambara



初めてのインドは予想以上に寒かったですが、それは楽しいひと時でした。

明日は会議の内容等を書いてみます。

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