2010年11月27日土曜日

不確定な気候変動への適応策 ~「メインストリーミング化」と「コミュニティベースの適応策」~

電力中央研究所の杉山大志氏が書かれた『地球温暖化研究の到着点と今後:「地球温暖化の環境考古学」の提案』が面白かったので、レビューと少し踏み込んだ意見。PDFはここからダウンロードできます。

杉山大志氏は適応研究をされている方ではないが、非常に頭の良い方で、資料の内容も筋が通っていた。僕が重要だと感じが点は二点:


  • 地球的な気候変動の調査研究をする場合にも、地域的な開発や環境変化の重要性も取り入れる必要性
  • シュミレーションに頼らずに、過去の自然環境への適応から学ぶ環境考古学の視点の重要性。



この視点がある理由は、以下の3点の要素があるからである:

  • 科学的には、気候変動の不確定性が大いに存在すること
  • 気候変動以外にも人間生活や生態系への影響は存在する
  • そして、それらの気候変動以外の影響自体が重要度の高い問題点があること


これは僕の視点と似ています。適応策のアプローチは大きく分けて二つ有ります。ひとつは気候変動モデルの精度を上げて、それに適応する方法を考える。もう一つは気候変動を含んだ潜在的な問題点を解決する。これは数日前に脆弱性の定義で説明した「潜在的な脆弱性」への対応です。この二つ目の概念によると、気候変動モデルの重要性はそれほど大きくなくなります。

僕が思うに、杉山氏はこの「潜在的な脆弱性」への対策の為、開発や地域的な環境変化の取り入れと、気候変動シュミレーションモデルに頼らない対策を説いています。そして、これは、適応研究で言われている「メインストリーミング化」と「コミュニティベースの適応策」にうまくマッチする考えです。そこを踏まえて、もう少し書いてみます。


メインストリーミング化

気候変動は不確定であり、その場合適応策の必要性も不確定になります。そして、開発問題でもっと大事なことがあるでしょうし、地域的な環境破壊を含めた変化には疑いの余地は有りません。そして、それらの事を考慮に入れることを「メインストリーミング化」をいいます。例えば、灌漑施設などをつくり農業の効率を上げる事は開発であり、また気候変動により水資源が少なくなってきたば場合それは有効な適応策になるでしょう。また、その地域の環境にあった農業を進めることは効率性でもあるでしょう。つまり、開発や環境変化を取り入れる結果が適応に成るかもしれません。酷な言い方をすると、仮に気候変動がなかったとしても、持続可能性な発展は遂げる事ができます。そして、気候変動があった場合、さらなる利点を得られることになります。気候変動に不確定性がある様に、気候変動懐疑論も絶対的なものでは有りません。科学とは常に、白黒はっきりしなく、灰色である事を理解するべきです。その灰色の結果を歪めた報道がなされたとき、科学は注意をしめすべきですが、白黒の判断するのは、科学者ではなく政治家や実業家などの意思決定者です。



コミュニティベースの適応策

話が、すこしそれましたが、もう一点、杉山氏が述べている「環境考古学による適応策」ですが、これは現在言われている「コミュニティベースの適応策」に合わせるとトレンドに合うと思います。つまり、過去の経験に基ずく対応策を見つける。その経験とはその地域に特性にあったものであるはずであるし、環境変化を取り入れたものでもあるはずです。大規模灌漑施設を仮に途上国に一つ作ったとしても、それを別の地域に転用する技術や資金はないでしょう。それなら、気候の変更にあった農業に変えたほうがいいかもしれません。本レポートではヨーロッパで気候の変化によって、ぶどうの栽培地域が変化したことを述べています。その方が、低コストで無理の無い適応策かもしれません。つまり、考古学などから過去の適応策を学ぶように、コミュニティの過去の経験から、無理のない適応策にを考える事が、先進国から大規模な適応技術の移転をするより、良いかもしれません。そして、これは適応だけでなく開発は、環境問題への取り組みでも同じでしょう。そして、このコミュニティベースの適応策とメインストリーミング化の問題がつながる訳です。



政治判断は別として、科学は盲目的に適応策研究について行うのでなく、広く環境変化と開発の話を取り入れた気候変動への取り組みがCOP16で話されるいいですが、これはサイドイベントでの話題でしょうね。それでは。

2010年11月24日水曜日

気候変動の脆弱性指数から、社会科学モデルの3つの問題点を見る ~データの存在、数学的問題、理論の間違い~
























世界銀行がポツダム気候研究所と製作を報告書が面白かったので、感想を書きつつ社会モデルを作るときの問題点を3つ指摘する。

今回取り上げるレポートのタイトルは:


How inequitable is the global distribution of responsibility, capability, and vulnerability to climate change: A comprehensive indicator-based assessment。


平たく言うと、気候変動へ責任、能力、脆弱性のの分布がどのように世界的に不公平であるかを、包括的な指標に基づく評価でおこなう。

PDFをここからダウンロード出来る。


本題のタイトルより、僕が面白いと思ったことは、量的な社会科学の調査のいい加減さを指摘しているところである。このレポートは過去の気候変動に関する脆弱性評価やそれに関連がある量的な調査を比べて、その優劣を議論している。

このレポートでは指数を使って国ごと脆弱性を比べている。脆弱性とは非常にローカルな事なので、国レベルの脆弱性を調べてもあまり役に立たないと思われるが、国際レベルでの適応策に対する資金の配分などに役立つと思われる。しかし、過去に作られた指数をもとに国際的に資金を比べる事に問題があるのではないか言う事にがこのレポートの趣旨である。


このレポートで取り上げた問題は、僕が常に言っている「社会科学モデリングの3つの問題」なので、それに組みなおして説明する。


データの問題

まず、社会もでるつくるのに必要なデータが存在しないことが往々にしてある。マクロレベルにデータが揃っていない場合。データを集めるか推測する必要がある。経済的なデータはある程度揃っていたとしても、それ以外はなかなか揃わない。経験から、経済以外で一番ちゃんとしたデータが有ったのは交通。その為、多くの行動学者は交通を研究フィールドにしているのだと思う。

脆弱性評価でも同じ様に、必要なデータが揃っているとは考えられない。実際、このレポートで取り上げられているDisaster Risk IndexやIndex for Social Vulnerability to Climate Change for Africaでは多くのデータはエキスパートからの知識に頼っている。つまり、推測でしかない。この様に重要な部分が推測のデータから得られた結果は、推測でしか無いので、調査の信ぴょう性が疑わしい。

この場合、どんなにモデルが優れたとしても、モデルを通す必要性自体が疑われる。


数学的な問題

広く評価されているレポートでさえ、初歩的な数学の間違いを犯している。検証(Varification)に問題があると言うことだ。例えば、Yahu等は複数の脆弱性評価の指数を比べたとき、基本数(Cardinal number)である気温と順序数(Ordinal number)である適応能力をごっちゃにしてモデルしている。


V = dT / dAC

dTが基本数の気温の変化だとして、dACが順序数の適応能力の変化だとする。そして、それらを割ったものから脆弱性を評価している。これは全く意味をなさない。dTを順序数にでも変換しておくべきであったと思う。


理論的な問題

これは同じ検証問題でもValidationと言われることである。Varificationの検証が「モデルを正しく作ること」であるのに対して、Validationの検証は「正しいモデルを作ること」にある。

例えば、このレポートによると皮肉にも、脆弱性指数と明確しているものよりも、国連がだしている人間開発指数(HDI)の方が信ぴょう性がある脆弱性の指数であることになる。しかし、かといってHDIが脆弱性評価の指数になるかと言ったら、そこには理論的な問題点がある。昨日のブログでも書いた事だが、現在IPCCで定義されている脆弱性とは、人間社会の「潜在的」な脆弱性だけでなく、気象モデルなどの検証を踏まえた「結果」をみる必要がある。つまり、HDIだけでは、気候などの外的な要因が含まれていない。つまり、HDIは理論的には脆弱性の指数には成り得ないのである。


社会モデルを専門としてきて常にぶつかることは以上の3つ。僕は現地調査やデータの収集のデザインもするので、分かることだが、社会調査では特にデータの質を過信するべきではない。特に、途上国から得たデータは出処を一度確認したほうがいい。データが間違っていたら、まともな結論にないたらない。帰納的推理(inductive reasoning)から社会を見るには避けて通れないことだ。

2010年11月23日火曜日

気候変動からの脆弱性を定義 ~潜在的な状況か、結果か~

来週のCOP16に向けて少し、気候変動関連の事をまとめて見る。気候変動は大きく分けて、温室効果ガス削減の「緩和策」と、温暖化後の世界に対処する「適応策」と二つに分けられる。適応策を考える上で、インパクトを受ける地域がどれぐらい脆弱であるかを調べる必要がある。


しかし、調べるにあたり、まずそもそも何を議論しているかを明確にする必要がある。そこで、脆弱性の定義をする必要がある。



脆弱性評価といっても、そこには色々な定義が存在する。脆弱性評価の権威であった僕の前職のボスは、「脆弱性評価の定義は150以上ある」と冗談をよく言っていた。数はさておき、脆弱性の議論は大きく隔たる。Contextual Vulnerability(潜在的な状況での脆弱性)では、脆弱性とは、システムやコミュニティの潜在的な特徴で決まるとしている。対して、Outcome Vulnerability(結果による脆弱性)では、潜在的な災害とそれに適応する能力の複合的な結果から脆弱性は決まるとしている。似ているが、前者は、外部からの影響に関係が無く脆弱性の解釈が「初めの段階」で決まっている。対して、後者は複合的な分析による「最後の結果」によって解釈される。その為、仮に同じ対象の脆弱性評価を行ったとしても、解釈が大きく異なることになる事がある。


さらに対策もContextual VulnerabilityとOutcome Vulnerabilityでは大きく異なる。前者は潜在的な事を対象にしているので、対策も潜在的な要因の底上げとなる。つまり、持続可能な開発やコミュニティ開発など、開発や発展問題に重点が置かれている。たいして、Outcome Vulnerabilityは結果としてインパクトがなければ良いので、ダムや高度な灌漑施設などの技術による対策でも解決できることになる。気候変動適応策の開発問題へのメインストリート化を考えると、Contextual Vulnerabilityはソフトな開発、Outcome Vulnerabilityはハードによる開発と捉えることが出来る。


COP16を開催する国連の定義はどうなっているかというと、脆弱性は災害からのインパクトと、適応能力から来るとしているので、Outcome Vulnerabilityと言う事になる。しかし、多くの議論が地域性などに関連するため、必ずしも技術による支援で解決できるとも考えていないであろう。


インドネシアに来る以前にストックホルム環境研究所で取り組んだ最後のレポートは、日本ではない某国の為に作ったのだが、脆弱性の定義が先方と大きく隔たっていたことで、初めつまずいた。そして、Contextual Vulnerabilityの重要性も説いて仕事は完結した。先日副代表から直接電話があって、先方がすこぶるレポートを評価してくれている「ありがとう」と連絡があった。国際社会では、バックグラウンドが違うため、同じ単語を使っていても、決して同じ事を話しているとか限らない。気候変動適応策の分野はまだ新しい分野なので、今後適応策の定義のまとまり方を見守っていく必要があるとつくづく思った。


COP16では何か変化や進展があるだろうか。個人的に注目しているところです。

2010年11月21日日曜日

インドネシアの気候変動適応策の現状と課題 ~メインストリート化~

インドネシアに来て早2ヶ月になる。気候変動の適応策と言われるの調査色が濃いプロジェクトをしている。せっかくなので、インドネシアの脆弱性評価をまとめてみた。






2007年に第13回目の国連気候変動枠組締約国会議がインドネシアのバリ島で開催され、2013年以降の次期枠組みの合意に向けたバリ行動計画が作られた。この行動計画で大きく注目を集めた一つの内容は気候変動への適応策である。つまり、気候変動によってもたらされる影響に関して、直接的又は間接的に対策をはかる事となった。二酸化炭素の排出量の削減を続けたとしても、既に気候変動からの影響は避けられない為、影響に対する適応策をこうじる必要がある。実質COP13で適応策はタブー視されなくなり、排出量削減の努力をするように、適応策は国際協力の重要課題になったと考えてもよい。その為、バリ島とインドネシア政府は気候変動適応策への重要な歴史の1ページを提供した事となった。インドネシアは気候変動の影響を受け易い地域と言われているので、気候変動適応策は国際政治以外の観点からも、重要度が高い。



インドネシアは、世界で最も大きい群島国であるので、海洋大陸と言われている。大部分のインドネシアは、2000mm以上の年間雨量があり、高い湿気と雨量は、気候が劇的に変化することを妨げている。その為、インドネシアの平均温度は、全群島でわずかの違いしか無い。しかし、気候変動によりその気象システムが変化する事が予測され、気象に関する災害からの影響が大きい国の一つと言われている。気候の変化により、気温の上昇だけでなく、かんばつや洪水の規模と周期に影響が出ると予想される。その為、影響を受ける範囲は、食糧安全保障、環境衛生問題、海面上昇など多岐にわたる。12月~1月の雨季にジャワ、パプア、スマトラの一部の地域とカリマンタン諸島の大部分で雨量の減少している (KLH 2009 p. IV-3)。そして、大部分のジャワ島とバリ島を含む東部インドネシアで降雨の上昇が観察されている。6月~8月の乾季に、大部分のインドネシアの地域で雨量の減少が観察されている。温室効果ガスの濃度の上昇によって、これらの変化は続き、インドネシアにより大きな気候に関するリスクをもたらすであろう。



気候変動からの影響が大きくなり、適応策を考えるとき、策は国の開発計画に統合されて考えるべきとされている。すなわちメインストリーム化である。気候変動の適応策は水資源の確保や堅固な農業の推進など、途上国の開発問題に直結した内容であることが多い。メインストリーム化することにより、一石二鳥で開発と適応策を効率よく達成することになる。そして、不確定要素が多い気候変動リスクへの適応策に効果がなかったとしても、メインストリーム化しておけば、一石一鳥で途上国の開発は促進される。インドネシア政府も、気候変動と開発問題の関係に関心をもっており、周辺諸国と比較しても、政府が制作する中期開発計画は気候変動に対する脆弱性と適応策が良く組み込まれてある。政府は、最近の中間開発計画を更新したが、その中で、重要な政策戦略の優先項目には、いくつかの気候変動適応策に関連する事が書かれている(Indonesia 2009)。



例えば、教育と健康を含めた、公益事業の交付の改善をひとつの優先項目に上げている。気候変動により、もし伝染病が今まで存在していなかった地域に拡大した場合、それに対応すべき新たな事業を迅速に立ち上げる必要性が出てくるであろう。その時、公共事業の交付がスムースに行われる事は適応策の一つと考えても良いのでないだろうか。開発計画や気候変動適応策で共通している言えることは、財政的な制約のため、公共事業に民間セクターを上手く取りいれる必要性がある。そして、インドネシア政府は民間部門参加により、既存の基盤とユーティリティの効率を改善することも視野にいれている。



水資源開発計画の優先項目は水資源の確保である。既存の水源確保を効率化して、貧困者へ良質な飲料水を供給する。降雨量の変化に伴い、水資源は気候変動から影響を受け易い分野であり、貧困層は気候変動に対しての脆弱性が高いと言われている。その為、この優先項目も気候変動に大いに関連がある政策と考えられる。政府は2014年までに、これらの優先項目を実施しやすくすることを目標にしている。その他にも、インドネシア政府は環境機能の改善と持続可能性を開発計画にメインストリーミング化する事も考慮に入れている(KLH 2010 pp. 8-9)。 今後の適応策プロジェクトは、これらの開発と適応策の分野を優先項目に従いサポートしていく必要がある。


参照文献


  • Boer, Buono, A. Rakhman and A. Turyanti. 2009. Historical and Future Change of Indonesian Climate. in MoE. Technical Report on Vulnerability and Adaptation Assessment to Climate Change for Indonesia - Second National Communication. Jakarta: Ministry of Environment and United Nation Development Program.
  • Indonesia. 2009. Overview of the Indonesia's Medium Term Development Plan 2004 - 2009.
  • KLH, Indonesia. 2010. "Mid-Term National Environmental Plan 2010-4 (NARASI).".
  • ------. 2009. Summary for Policy Makers: Indonesia Second National Communication Under the United Nation Framework Convention on Climate Change (UNFCCC).

2010年1月22日金曜日

小規模のマイクロファイナンスのファンドへの適切なプロダクト・デザインを考える

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このマニラの滞在記は、Living in Peace(http://www.living-in-peace.org/)の活動と、グラミン・ファウンデーションの「Bankers without Borders」プログラム(http://www.grameenfoundation.org/take-action/volunteer)の一環でとして行っている。
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適切な、プロダクトデザインをする事は、DDを適切に行うことと同じかそれ以上に重要な事である。まず、マイクロ・ファイナルのファウンデーションがが小さい場合は特に気を付けるひつようがある。地元のMFIコンサルタントに話を聞いたので、小さいファウンデーションがリスクとあまり取らないで済むような、プロダクト・デザインの方法の例を述べる。

まず、ファウンデーションが小さい場合、失敗する事が許されない。一回の失敗も許されないである。だから、必要ないリスクはとらないことが鉄則である。以前に記述した、グラミン・ファンデーションが行っている保険のような「保証」仕組みを使う、又はMFIに使うこともひとつの方法である。それでも、100%を保証を得ることは出きないだろう。

まず、小さいファンデーションは、小さいMFIや貧困層が多い地方がのローンプロジェクトを普通のファンドの仕組みから行うのは危険度が高いと思われる。つまり、小さいファンドは、まず大きいMFIに融資することが一番安全と思われるその地域のトップ8の大きさのMFIを狙うと良いとアドバイスをうける。それでも、もちろん、上で述べているように、MFIの選択には最善の注意を払いべきある。危険度低いMFIを決定した後に、適切なプロダクト・デザインに入る。

例えば、GFは初めてのパートナーに融資する時は、1年で5万ドルから開始する。その後、そのMFIへの融資の危険度が妥協できるレベルとわかれば、この融資の規模を上げる。Oikocreditもニ度目の融資から、金利を下げたり、ソーシャル・パフォーマンス・マネージメントを奨励して、それを採用することにより、金利を下げたりする。

さらに、リスクを回避する貸方と返却の方法がある。一度に全額貸してしまうのと、借りるのファウンデーションにもリスクが大きし、借りたMFIにも負担が大きい。一度に全額かしてしまって、そのMFIや周辺の状況が変わり、返済能力に変化が出た場合、このファウンデーションは何も対応することが出きない。MFIのローンは返済時にも進んでいる。その為、全額一気に返すことはそのMFIには困難か、ローンの調整を長期間かけて行っていないと不可能である。

その為、貸出も返却も部分的に行う方が双方の為である。例えば、500万円で2年の場合で説明する。この場合、この500万円を4分割する、そして、はじめに4分の1の125万円を貸す。そして、45日後にレポートを提出してもらう。このレポートはモニタリングの始まりである。レポートによって、ローンが適切に使われていたかどうか確認する。ひつようなら、検証をおこなう。3ヶ月後に一旦この貸し出したお金を返却してもらう。その間に、金利だけでも毎月払ってもらっても良いだろう。そして、その時、今後もこのMFIに融資することが問題ないのなら、この時貸しだしの上限を250万円に引き上げる。もし、問題があるなら、そこで、融資を終了するとの連絡を取る。こうして3ヶ月ごとに融資の上限を上げていく、そして、3ヶ月事に125万円を返却してもらう事により、彼らの返却能力を確認し続けることができる。1年後には貸し出しの上限は最高になっている。それから、一年かけて、4分の1ずつ返却してもらう。この方法だと、MFIも必要ないときは、ファンドを借りるひつようがなく、無駄な利子を払うひつようも無い、さらにMFIも急に全額の返却を求められないので、返却を計画的にできる。

大事なことは、MFIは常にファンデーションからお金を借りなくてならないため、彼らへのレポートの報告やメールや電話の返答などを行うインセンティブがはたらく。さもなくば、彼らはメールなどへ返答しなくなる可能性も十分にあるとGFのクリストファー氏は言っていた。しかし、この内容はMFIごとにも、ファウンデーションの方針によっても変わるだろう。OikocreditはRevolvingといわれる定期的な返却を求めるファンドを他の国ではすでに行っているが、フィリピンでは行っていない。今後は行う予定こと事。現在のところ、返却能力の確認の為、彼らは、モニタリングとは別に、融資を開始してから初めの3ヶ月後に現地に出向いて、状況を把握する。これは流石に骨がおれる。これなら、インセンティブがうまく働く、Revolvingのローンをデザインする方が賢いやり方だと思う。

2010年1月14日木曜日

ソーシャル・パフォーマンス・マネージメントの市場

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このマニラの滞在記は、Living in Peace(http://www.living-in-peace.org/)の活動と、グラミン・ファウンデーションの「Bankers without Borders」プログラム(http://www.grameenfoundation.org/take-action/volunteer)の一環でとして行っている。
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今週の会議で思ったことは、「ダブル・ボトムラインを狙う事にマーケットはまだ反応していないが、グラミン・ファウンデーションは存在しない市場をつくるつもりなのだろうか」。

存在しない市場とはソーシャル・パフォーマンス・マネージメント(SPM)を気にする市場である。前回説明したグラミン・ファウンデーション(GF)の取り組みで現在のお金を請求出来ているのは、直接投資、不履行を保障する業務、それから、ローンの取引を自動化する為のコンサルティング業務。投資が「貧困層の軽減」に役立つ様にする為のコンサルティング業務、すなわちソーシャル・パフォーマンス・マネージメントはお金を取れていない。「貧困層の軽減」がマイクロ・ファイナンスの目的であるが、実情はMFIとしての経営の持続化と、投資の安全な回収に力が注がれている為だろう。SPMをすることに、投資を管理する投資銀行に意味を見出していないので、MFIにSPMを要求しない。同じ様に、MFIもSPMをすることが、経営の持続化と関係がないので、彼らもSPMをする必要がない。


「存在しない」と書いたが、SPMをコンサルティングする事にお金を取れている会社もある。前回説明したダンの会社だ。しかし、それはほんの一握りある。ここで、これらのコンサルティング会社やグラミン・ファウンデーション(GF)はビジネスのルールを変えようとしている。投資銀行に「SPMをきちんとしているMFIに投資をすれば、投資の安全な回収につながりますよ」とか、最低限「CSRとして意味がありますよ」と教育する。そして、MFI側にも、「SPMをすることは、MFIの経営の持続化につながりますよ」とか、最低限「MFIの存在する意味は、貧困の削減ではないですか」と議論する。彼らが無料でSPMのワークショップを行うことはこの為である。そして、願わくば、金銭の回収率だけでなく、社会的な貢献度合いもマイクロ・ファイナンスのディー・デリジェンシー(DD)に入れていくこともこれらのコンサルティングの会社やGFは望んでいる。ここでも、ナイーブに「いいことをしよう」という考えだけでなく(実はそうなのかもしれないが)、SPMを投資銀行やMFIが気にするようになれば、GFにも新たなビジネス・チャンスが回ってくる。ビジネスのエコシステムが広がっていくのである。


ソーシャル・パフォーマンス・マネージメントについては、GFで働きながら学んでいくので、その都度書いていくが、SPMは、社会的ミッションを実務に変換させる制度化したプロセスである。それは、社会的ゴールを決めることや、これらの目的への前進をモニターして、パフォーマンスと実行を改善するために情報管理なども含まれている。ほとんどのMFIsには明確なソーシャル・ミッションをもっているが、このミッションは計画的で管理された戦略の一部としてめったに進められない。マイクロファイナンスのソーシャル・ミッションは、自動的に行われているとしばしば思い込まれているが、実際は他の金融機関と同じく、戦略とは資金の回収する事だけである。金融のゴールと同様に、MFIsが社会的な業績を評価し、モニターし、管理することができれば、ソーシャル・ゴールをよりうまく達成することができるだろう。しかし、同時にそれを行うことが、不履行の削減や利益率の上昇などの金融のゴールの足かせにならないことも必要である。

GFなどは、まず「社会的ミッションを追求する事が、金融のゴールの足かせにならないこと」をワークショップなどを通じて広げていこうと思っているようだ。そのロジックは以下の通りだ。

マイクロファイナンスで「社会的ミッションを追求する事」とは、貧困の削減である。貧困がある地方のなどでマイクロファイナンスが進まない理由は、貧困層はローンを返却する能力がないとみなされているからだ。つまり、これは不履行するリスクが高くなる可能性があるので、「金融のゴールの足かせ」になりうる。しかし、GFのクリストファーさんは「地方の貧困層は返却する能力は低いかもしれないが、返却する意志は強いので、そこを見れば、不履行率が必ずしも上がるとはいえない」と言っている。地方では都市部と違い、複数のMFIが事業を行っていないというか、MFIがないところがほとんどだ。その状況では、貧困層は不履行をして、あるMFIのメンバーをやめて、別のMFIのメンバーになることはできない。つまり、セカンドチャンスがないので、不履行が許されない。この状況では、不履行しない意志は確かに強いかもしれない。前回紹介した神父ジョービックさえ、「今日半分しか家族が食べるものがない状態でも、不履行すると、次のローンをするのチャンスががなくなるので、不履行はするべきではない」と言っていた。

つまり、財務評価以外を見ることにより、貧困層に貸し付けを行うことが、思われているほど、リスクが高く無いことを証明できるかもしれない。SPMは「社会的ミッションを追求する事」を助け、結果的に財務の評価を落とさないかもしれない。そして、彼らは貧困層がいる地方で、マイクロファイナンスを推し進めることができるかもしれない。そして、SPMが「社会的ミッション」と「金融のゴール」の両立をすることを可能であることを証明することができて、それを投資銀行が理解するならば、SPMをすることの意味がMFI業界に現れて、GFなどの仲介業者やコンサルタントにも新しいビジネスチャンスが生まれるのだろうか。

別の見方をすれば、SPMが「金融のゴール」をの追求を助けるかどうかは長い目で見るひつようがある。環境問題に関わる立場から一つ例をあげよう。20世紀の終りの頃に、シティバンクなどの大手の銀行は環境に配慮しない投資に対して、避難をうけた。多くの学生は、シティバンクのキャッシュカードを切り捨て、シティバンクの利益は大幅に下落した。この事実をうけて、大手の金融機関は自主的にプロジェクトファイナンスを管理・モニターする仕組みを作った。赤道原則と呼ばれる、この仕組みはIFCのセーフガードをベースに作られて、500万ドル以上のプロジェクト・ファイナンスを行う場合、金融機関のシンジケートは環境・社会インパクトアセスメントを自主的に行うことが決めた。詳しくは、http://www.equator-principles.com/

赤道原則はCSRだが、彼らも過去の失敗から、環境・社会に配慮しないと、「金融のゴール」に影響をうけるのがわかってきて、強制されるよりはと、自主的に原則をつくったのだろう。赤道原則は縛りがないと批判を受けるが、彼らが、「環境と社会的ミッションを追求する事」にインセンティブは発生している。そして、もし、彼らがきちんと赤道原則に従えば、融資をうけて、プロジェクトを思考する団体へは、これらの投資銀行からのシバリが発生する。つまり、この段階で、「自主的」なものから、「強制力」がある取り決めになる。これは、MFIのSPMでも同じではないだろうか。投資銀行がSPMをCSRの一環として始めれば、それが自主的な物であっても、融資の条件として渡された時には、「強制力」のあるものへと移っている。

一年ほど前に、世界銀行が、赤道原則を元にした、ルールをMFIにも作る予定だ、といったニュースを読んだ。GFなどの、ローカルの仲介業者やコンサルタントは同じことをボトムアップで試みている。成功すれば、SPMコンサルティングの市場開拓なので、ここでもインセンティブが発生している。トップダウンにしろ、ボトムアップにしろMFI版の赤道原則を見てみたいな。

2010年1月11日月曜日

フィリピンの今のところの生活

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このマニラの滞在記は、Living in Peace(http://www.living-in-peace.org/)の活動と、グラミン・ファウンデーションの「Bankers without Borders」プログラム(http://www.grameenfoundation.org/take-action/volunteer)の一環でとして行っている。

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写真は、左から、クリストファーさん、ダンさん、僕、神父さん。噴火の後のマヨン山の前にある教会。





番外編として、日本の家をでてから、今までのフィリピンの生活をまとめてみる。

フィリピンに着いたのは、1月4日。田舎暮らしをしている僕はまずフェリーにのって、本土の飛行場に行かなくてはならない。正月明けであったので、フェリーは非常に混んでおり、ござをかりて通路で2時間過ごした。この時点で途上国に行くメンタルの準備ができた。フェリーは二時間で、フィリピン行きの飛行機は3時間ちょっと。どれだけ、フィリピンが日本に近いか、僕の島が日本から遠いか思い知らされた。

グラミン・ファウンデーションが勧めたホテルは、特別よくも悪くもなく、何故か各駅停車するエレベーターを除けば十分満足できる。インタネットは無いので、その夜から、無料のWifiを目当てに近くのマクドナルドの入り浸る様になる。これが良くなかったのか、体の調子をすぐに崩してしまった。ホテルの近くにある。Green beltと呼ばれるショッピングセンターは日本や欧米のショッピングセンターと比べても素晴らしい雰囲気をもっていた。そこで、いつも使っているモレスキンの偽物のノートと、安い携帯電話を20ドルぐらいで購入。携帯電話は1ヶ月後に10ドルで買戻してくれる約束をした。とりあえず、ノートと携帯電話を手に入れて、仕事モードは完成した。

グラミン・ファウンデーションは元々はアメリカを中心にして活動していて、アジアへの事業拡大と、クリストファーさんのフィリピンへの帰国計画があったので始まった。その後、従業員は6人まで増えたが、それでもひとつのオフィスを借りるには小さいので、別のMFI関連の会社とオフィスをシェアしている。高層ビルの12階のオフィスがあるので眺めは最高。しかし、昼飯の選択は非常に乏しい。ついてから、数日はこことマクドナルドの非常に栄養価の乏しい食べ物を食べていたので、具合を悪くしてしまったのだろう。周りをもう少し見れば、アジアやスペインなどの美味しそうなレストランが並んでいる。街の発展度合いも、田舎暮らしの僕には、東京とあまりかわりは無いように思える。

もう少し、真面目に答えて、アフリカへ調査によく行っている僕がみて、マニラを非常に発展してるように見える。道路は整備されていて、巨大なスラム街も街の中に見えない。これが、アジアとアフリカの差なのかな。モザンビークの首都の数カ月前にいったが、道路は穴ぼこだらけだった。

3日目にマヨン山の近くのMFIを予備調査に来た。マヨン山は数週間前に、3年ぶりに噴火したことで、日本でもニュースになっていた。家族に、フィリピンに行くと行ったと時、「大丈夫、マヨン山はマニラから遠いから全く危険は無いよ」と言っていたが、今そのマヨン山の真横にいる。これを書いている現在も日本の家族はその事を知らない。教えないことが優しかとも思う。マヨン山は日本の富士山とそっくりで美しい。夜には今でも、赤い火口が見えて本当に美しい。うちの妻と同じで、危険なものと何故か美しい。宿は神父ジョービックの教会で、無料泊まらせていただいている。申し訳ないがありがたい。彼の教会はちょうどサンフランシスコが発見された頃に立てられた教会で、マヨン山を一望できる素晴らしい歴史のある教会だ。トイレの水はでない、シャワーは水だけ、ゴキブリが部屋にいるが全然気にならない。ある意味オックスフォードを思い出す雰囲気をもっているのが嬉しい。僕が寝た部屋は、神父の勉強部屋。本棚を眺めてみた。読んでいる本を見ると、その人の本心が見えると思う。宗教系の本に混じって、戦略的マネージメントの本もあった。彼が起業家に見えるのはこんなところからきているのかもしれない。



話を戻すと、マヨン山にあたりの来たのは、神父ジョービックが設立したMFI(SSPA)を視察するためだったが、その他にも色々な人に会えたのは良かった。地元の大学には、マイクロファイナンスで応募出来そうな助成金のコーチングをした。地元で銀行を経営している人に、観光をかねて、彼の銀行からMFIのローンを借りているところに連れていってもらえた。前回の記事にも何度か描いたダンに会えたのは非常に大きい収穫だろう。神父ジョービックのMFIは再来週にPlanet Ratingによって、レイティング審査を受ける。そのトリップに同行出来る話が出来ていたが、それが危うくなった。ぼくがフィリピンに来た一番の理由はDDに似た調査方法を学ぶためだ。今のところ、グラミン・ファウンデーション、オイコ・クレジットからはOKが出ているが、一番楽しみのしていたのは、Planet Ratingとのトリップだった。それが無理になりそうになったとき、ダンさんが「俺がおしえてやるよ」と言ってくれたのは嬉しかった。彼の、マイクロファイナンスの戦略的マネージメントのプレゼンを見たら素晴らしかったので、ダンさんのところから、DDに似た調査方法を学べるのなら、すばらしい。


ハーバードのケネディスクールでMBAをしたダンさんも、マジンガーZの英語の吹き替えが初めての仕事だったらしい。その話を聞いた後に、彼は僕のヒーローになった。マジンガーZに勝てるのは、リアルにガンプラに夢中だったガンダムだけですね。それで、夕食時に話が一気に盛り上がった。みんなで腹を抱えて笑った。気持ちよく仕事をするには、技量より、パーソナルな結びつきだと常におもう。彼とはうまくやっていけそうだ。もう一つ盛り上がったのは、「タクザ」。タクザとは、ヤクザよりもパワフルで、メンバーも多い団体のようです。逸話的な統計では、98%の既婚者の旦那はタクザのようです。


タクザとは、「妻を恐れる旦那」のスラングだそうです。僕もタクザになりますって、いうか昔からにメンバーだったと思います・・・。彼の言ったボトムラインは「俺らはキングになれるが、妻はいつもエースだ」です。わかるかな~。

2010年1月10日日曜日

MFIはもっと貪欲であるべきか

マニラに帰ってきたので、1月7日のメモ。

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このマニラの滞在記は、Living in Peace(http://www.living-in-peace.org/)の活動と、グラミン・ファウンデーションの「Bankers without Borders」プログラム(http://www.grameenfoundation.org/take-action/volunteer)の一環でとして行っている。
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今朝4時起きで、あるMFIの視察に出かけた。数週間前に富士山に似た山が噴火したと、日本でもニュースになっていた場所である。その前に、現地でマイクロファイナンスをコーディネートをしているダンさん(Dan Songco Pinog ME)と、教会系のMFIを設立した神父ジョービック(Fr. Jovic E. Lobrigo)と、GFのクリストファーと朝食で、MFIの利益率の話になった。

ダンさんはMFIはもっと利益率を追求するひつようがあると言っていた。彼のロジックは、利益率を追求しないと、MFIは安心して、貧困層にローンを提供できない。マイクロファイナンスが飽和しているといわれているのは、貧困層にMFIが向いていないからだと。つまり、利益率が上がれは、内部補助(Cross subsidy)をして、貧困層にもローンを提供できるというロジックだ。しかし、問題はこのロジックはオートマチックではない事だ。利益率を目指して大きくなることに目標にいるMFIは、利益率が上がればもちろん、自分のMFIが大きくなる事にその利益を使うことになる。「十分に利益率がでたら、貧困層にもローンを提供できる」といっても、ボトムラインが違うのだら、その「十分になる」時期は将来も現れないだろう。

つまり、開発の考え方をしっかりと持っているMFIが大きくなるか、利益率を追求しているMFIの考え方をかえるしか、ビジネスと開発のダブル・ボトムラインを達成できることは無いだろう。神父ジョービックのMFIは前者の開発のスピリットを持ったMFIだ。

ここの事務所を尋ねたのでまとめる。

Simbag SA PAG-Asenso. Inc.(SSPA)は15年前に神父ジョービックによって、設立された、7年前に教会から独立したが、それでも、教会系のMFIとしてのステータスを色々なところに残している。例えば、資金は教会から安く借りて成り立っている。そして、センターミーティングのはじめに聖書を読む時間が割り当てられている。現在、23,000のローンメンバーがおり、19の支所があり、181人のスタッフと抱えている。ローン・オフィサーのキャパシティは一人当たり300人のメンバーと考えられている。ひとつの支所には5-7人のローンオフィサーが配属される。そして、19の支所があるので、最高で28500から39900人のローンメンバーを受け入れることができる計算になる。つまり、稼働率は80%から57%になってしまう。利益率をそれほど求められない為の非効率性でもあるとも考えられる。これが、ダンがいっている「利益率をあげろ」といわれるゆえんである。

ここのマイクロ・ファイナンスはローンだけでなく、マイクロ預金や生命保険もおこなっている。不履行率は2%だが、フィリピンは災害がおおいので、タイフーンなどにより、不履行率は変化する。例えば、2006年のタイフーンの災害の時は不履行率が5%まで上昇した。このMFIのメンバーであることをやめる、ドロップアウト率は14%で、フィリピン平均の30%に比べると非常に良い状況である。この低いドロップアウト率は、メンバーに成っていることによる付加価値にあると思われる。例えば、メンバーになって、1年たつと奨学金制度に参加する事ができる。その他にも色々は、付加価値があるが、その他にも、教会系ののMFIであるために、メンバーのロイヤリティが高いことも考えられる。平均、年間1000の新しいメンバーがこのMFIに参加している。金銭的には、これは大体1千万ペソの増加である。現在、それほど、アグレッシブに成長を期待しているわけではないが、アグレッシブに成長するなら、農業の関連の保険やローンに進出する必要がある。

SSPAが現在持っているローン・プロダクトは、家の改修等のローン、生計の為のローン、マルチ・パーパスのローンで、月2%の金利が掛かる。これは、マイクロ・ファイナンスの市場価格考えると非常に低いものに成っている。それは、上記の述べたように教会から低い金利で資金を借りることができるからである。これらのほとんどのローンはグラミン方式のグループによるものである。小さいローンは個人のローンであるが、かれらはそのうちにグループ・ローンに移ることを期待されている。

このMFIはインフォメーション・マネージメント・システムを持っているが、GFがうりにしているMOFOSの様なオンラインのシステムではない。インタネットのコストが下がっているので、オンラインのシステムを導入することも大いに考えられると言っていた。ローンのデーターは紙からコンピュータに毎日入力されるので、支所では毎日、情報が更新される。しかし、これらのデータが集められてCEOの机に届くまでには2週間の時間がかかる。オンラインのシステムが導入されれば、この時間がさらに短縮されるだろう。それから、一つ支所に行った時に気づいた事だが、貧困の度合い、過去のローンが目的どおりに使われたどうかの値などのローン以外の情報は紙のまま保存されており、ローンの情報と重ねて分析する事ができない。これは非常にもったいないとおもう。データはそこにあるのに、コンピュータで読める情報になっていないので、将来のローンをデザインする事に使われることは無い。

ローンオフィサーは、センターミーティングを日に二回こなす。二回という数も、クリストファーにすると少ないそうだ。実際、SSPAも昔は日に三回行っていたそうだ。ここにも効率性を改善する余裕がある。しかし、その為にダブルボトムラインのもう一方の「開発の為にマイクロ・ファイナンス」の質が悪くなる可能性のある事を忘れては行けない。この「センターミーティングを日に二回」は組織で統制と取れている。それはMFIに、組織としてのセンターミーティングの方針があるということなので、評価出来る部分だろう。これが、ある支部は2回で、ある支部は3回だと、MFIの組織として評価がさがる。ここはDDで見てもいいところだと、クリストファーさんは言ってくれた。

1回のセンターミーティングは、約2時間。クリストファーさんの常識だと、大体一回30分なので、いかにSSPAがセンターミーティングに時間を掛けているかがわかる。2時間かかる理由に、聖書を読む時間がある事や、付加価値の奨学金の話も混じっているので、時間が掛かると言っていた。1回のセンターミーティングには、30から60人のメンバーが参加する。グループ・ローンなので、5人が集まて、ローンオフィサーとローンの内容や金額を決める。センターミーティングはこのように、ローンの契約をむすぶまでに仕組みであって、契約後に変更をすることを話しあわない。っていうか、ローンの契約は6ヶ月程度なので、変更する仕組みの必要ないのだろう。

全体の印象だが、SSPAは社会的意義の為に投資するなら、最高のMFIだとおもう。しかし、彼らは民間からのお金をひつようとしていない。資金を受けても、かなりセレクトした後だ。投資銀行から融資を受けて、利益率の向上を迫られて、彼らのしたいマイクロ・ファイナンスができなくなるのを恐れている。個人的には、途上国は自分たちのペースで開発を進めればいいと思う。さもないと、なんの為の開発なのか分からない。すべての事でスピードを競う必要は無いのではないだろうか?急がせるのは、先進国同士の開発エゴや、投資銀行の利益率の為なのか?そんな事を考えさせられるMFIだった。

2010年1月6日水曜日

グラミン・ファウンデーションのコンサルティング業務

後半でグラミン・ファウンデーション(GF)の金融(直接投資)以外のコンサルティングかそれに近い業務について話を聞いたので、まとめてみました。

GFのコンサルティング的な仕事で大きな部分を受け持つのが、シアトルにベースを置く、テクニカルの部署。彼らはこれらの事業をテクニカルと呼んでいるが、内容はIBMやアクセンチュアの様なソフトウエアの開発と戦略的マネージメントをあわせたコンサルティング業務だと解釈した。このテクニカルな部門は大きく分けて、「MFI」と「開発」のテクニカルに分けられている。


「MFIの為のテクニカル」の作業とは、個人ローンの取引のオートメーション化である。現在のところ、95%のフィリピンのローンは紙とペンで行われている。しかし、最終的に、これらの情報はExcelなどの電子的なデータに落とされる必要がある。この「紙」から「電子データ」への移行に入力ミスなどが入り込む余地が大きい。その為、この部分をオートメーション化するソフトウエアをGFのシアトル部署が制作した。

このソフトウエア、MIFOS.orgはJAVAで書かれたオープンソースのソフトウエアである。MFIは無料でダウンロードでき、運用も可能である。しかし、現実には、ほとんどのMFIはMIFOSを使う技能がないので、MFIがサポート無しに運用している例は殆ど無い。結果的には、MIFOSを使用する為に、MFIはGFにコンサルティング料金を支払ってインストールからトレーニングまでを発注することになる。これはオープンソースのソフトウエアのLinuxを使ったコンサルティング業務をおこなうIBMと似たビシネスモデルだと考えられる。

このコンサルティング業務はシアトルの欧米の運用費用をカバーする必要があるので、途上国のMFIには値段が高額に設定されている。この高額な料金に対する批判を受け、GFはある特定のMFIがMIFOSを必要としているかどうかの意思決定をサポートする業務を始めた。この業務は以前はMIFOSとは独立して行われていたが、今はMIFOSを使うかどうかの意思決定の為だけでに行われている。


もう一方の「開発の為のテクニカル」とはもっとエンド・ユーザーに対してのサービスである。しかし、クライアントはMFIであることにかわりはないし、サポートするレベルも戦略的な意思決定である。例えば、マイクロファイナンスが成長事によって、マイクロファイナンスが慈善事業ではなく、持続可能なビジネスであることは証明された。しかし、その結果、貸し付け先も、不履行が起こりにくい事業を中心とした物に集約されて、貧困層への貸し付けは意図的に無視されてきている。その為、GFはMFIに対して、これらの無視されてきたエリアで、持続可能なビジネスを行うためのコンサルティング業務を行っている。

具体的な例として、バングラデシュのグラミン電話の業務を真似て、貧困層が携帯電話を公衆電話の様に使用する業務や、携帯電話で市場価格を調べ、一番良い時期に農作物を売る事を助けるビジネスモデルをMFIにを紹介する。これによって、MFIは貧困層でもビジネスを行える可能性がある事学ぶ。そして、ここでもシアトルの部署は携帯電話のソフトウエアを制作したりと、重要な部門を占めている。


それから、金融業務でも少し書いたが、社会的なパフォーマンス・Social Perfomance Management(SPM)を分析するコンサルティングも初めている。上にも述べたが、MFIは持続可能なビジネスとの認識はできている。しかし、MFIは本来、貧困層の開発サポートを目的に始められた事業である。その為、貧困層の削減に役立っているかどうかの分析が必要になってくる。現在行われている分析は、逸話的な質的な分析は、大学などがエコノメトリックの手法を使った大掛かりな物のどちらかである。後者はMFIには技能がなく不可能は分析方法である。その為、ワシントンのGFはこれらの中間の分析方法、Poverty Index、を開発した。

このインデックスは、各国の国勢調査を元に、ある家庭が貧困かどうかを判断するそれほどデリケートではない10の質問項目を確率的に選択した。この10の質問を行えば、収入などを長期間なモニタリングをしなくても、ある家庭が貧困である確率を測定できる。収入などに長期間モニタリングに比べて、大幅にコストの削減が見込まれる。さらに、簡単に質問事項であるので、同じ家庭を期間を開けて質問をすることによって、「マイクロ・ファイナンスによって貧困層の削減は行われたか」を分析可能になるかもしれない。現在はまだ、十分は時系列のデータが揃っていないので、この分析はまだ不可能である。

この分析方法も無料で公開されており、MFIは独自に行うことが可能である。しかし、十分に分析方法を理解しないままに、この分析を行っているMFIも多い。現在、GFをSPMのコンサルティングとして雇う例は多くない。その場合も、クライアントはMFIより他のコンサルティング会社の場合が多い。

最後に、昨年からGFはHuman Capital Developmentなるものを進めている。これに関しては、過去のブログに書いたのでそれを参照することに致します。


【グラミン財団の方針から学ぶ、カリスマ会社の問題点】
http://blog.takeshitakama.com/2009/11/blog-post_12.html


このプログラムも現在は、コンサルティング業務としては開発段階であり、このプログラムにMFIが料金を払うかどうかは未知数である。

2010年1月5日火曜日

グラミン・ファウンデーションの過去5年とこれから



グラミン・ファウンデーション(GF)に今日到着。はじめにGFの過去5年と今後の計画を聞いたのでまとめる。

グラミン・ファウンデーションは1997年にワシントンに作られたマイクロファイナンス関連の機関。名前の使用やはじめの投資などをグラミンから受けているが、グラミン銀行とは一線と置いている。その為、グラミン銀行とは別の哲学やアプローチを持っている。例えば、GFはマイクロファイナンス以外の活動も視野に入れている。アジアでは香港がHQだが、実質フィリピンが活動拠点になっている。


グラミン・ファウンデーションのその他の説明は、彼らのWebに載っているので省きます。www.grameenfoundation.org/


GFの過去のアプローチは、ターゲットの国を決め、そこの5つぐらいのMFIにターゲットをしぼり、彼らの活動をサポートする。サポートする内容は大きく分けて、ファイナンス・プロダクトと、テクノロジー。


ファイナンス・プロダクトのサポートとは、MFIにビジネスプランをださせて、それが良ければ、直接投資する。その時に同時にマネージメントのアドバイスなどもおこなう。テクノロジーとは、Loan Trucking Systemで、これに関してはあまり説明は受けなかった。

この今までの方法は、GF側としては、あまりうまくいかなくなってきた。今までサポートしてきたMFIはとても大きくなってきたので、GFが直接投資する割合が、彼らの全体の投資金額から見て、非常に少なくなってきた。その為、彼らの投資のインパクトが薄れている。例えば、フィリピンで一番大きいMFIの一つであるCARDは20ビリオン・ペソの資産を持っている。


その為、GFは別の方法でMFに関わる方法を考えついた。直接MFIに投資する「金融プロダクトを機関」へのサポートから、「セクター」へのサポートである。サポートするレベルも金融だけでなく、ソーシャルパフォーマンス、ヒューマンキャピタルなどに広げられた。

「セクター」レベル、もしくは成長したMFIに対する、この新しい金融サービスはGrowth Grantee Programeである。

上に書いたように、古い大規模なMFIは成長したので、彼らへの直接投資はインパクトにかける。彼らが、ファンドを取ってくるべき相手は、シティバンクなど民間銀行である。そして、GFの新しい役割は保険機構の様に民間銀行のファンドの不履行を保障する事である。例えば、民間機関が100万ドルのファンドをCARDに提示した場合、その50%の50万ドルのファンドの不履行を保証する。つまり、CARDが不履行を起こした場合、シティバンクなどははじめの50万ドルをCARDではなく、GFから回収する事を約束する。

もし、不履行がない場合は、その50万ドルの保証の為に、GFはなんのお金も用意する必要は無い。もし、不履行が起これば、アメリカの裕福層が支払うことになっている。その裕福層も不履行が起こらなければ、何も支払う必要はない。今までに不履行が起こったことは無いので、誰も支払いはしてないことになる。しかし、この保証があるので、シティバンクなどの民間銀行はMFIに投資をする時に安心感を得ることができる。

GFもこの保証を仲介することで、CARDなどのMFIに、料金としてファンドの3%請求する。この料金にはアドバイス料やシティバンクなどへの交渉料も入っている。一口のファンドは500万ドルぐらいである。


これとは、別に今までの直接投資も引き続き行われている。この直接投資ののプログラムはPionner fund。


ファンドのサイズは5000ドルから300,000ドルと断然に小さい。対象は小規模で新しいMFIか、大きいMFIでも田舎での活動に力を入れているところになる。つまり、上記の民間銀行からのファンドが取りにくいところに、これらの直接ファンドが使われる。

ファンドの利回りは年3-6%で2-3年のプロジェクトである。その後、この新しいMFIはPionner fundを卒業して、Growth Grantee Programeに参加することを期待されている。

どちらのプログラムでも、金融アドバイスの業務を行うが、今現在そのサービス自体に料金はついていない。サービスの料金設定がきまったり、ライセンスの取得ができれば将来、これらの業務を独立したサービスとして立ち上げる可能性も残している。

その他、個人的な資本だけでなく、社会資本の育成にも力を入れる構えである。例えば、社会的投資はなんであるかの説明、金融レポートの書き方、レイティングに関してのワークショップを開いている。これらのワークショップのターゲットはMFIなどの需要側と、民間銀行や政府などのファンドの供給側とあわせて行われる。

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