2011年1月4日火曜日

国連開発プログラムの気候変動適応策を探るツールキット ~因果関係分析の適用~

国連開発プログラムが出している。気候変動適応策のガイドラインが評価に値するのでまとめてみる。


"Toolkit for Designing Climate Change Adaptation Initiatives"
Published by the United Nations Development Programme, November 2010.
This guide supports the design of measurable, verifiable and reportable adaptation initiatives. It provides step-by-step guidance for the design of climate change adaptation projects.



この手のガイドラインは方法論を明確に書いていないことがよくあるが、このガイドラインは方法論の概要を書いてあるので、そこから進めることが出来る。この方法論が使われる背景となる理論も、付け足して説明してみる。

このレポートの方法論はプロジェクト・サイクルに基いて考えられており、サイクルは6つに分かれている:


  1. 問題の定義
  2. 因果の特定
  3. 基準となるレスポンスの特定と明確化
  4. バリアの特定
  5. 予想される結果の構築
  6. 評価とチェックリスト


内容は、特別変わったことでもなく、一般の開発プロジェクトに似ている。そして、そこが重要な事である。このガイドラインは気候変動適応策は開発の一環としているのだろう。気候変動を開発プロジェクトに一体化するメインストリーミング化は、一つの流れなのでこれでも良い。ただ、そう捉えていない人たちもいるので注意が必要である。


開発を中心に捉えているが、更に、そこからベースを何にするかによって評価・分析方法が変わっている。レポートで取り上げられているものは:

  1. 災害ベース・アプローチ:現在の災害への脆弱性とリスクをもとに、将来の脆弱性がどのように変化するか推定する。それを元に適応策をさぐる
  2. 脆弱性アプローチ:現在の脆弱性のしきい値がどの気候変動シナリオで弾けるか考える
  3. 適応能力ベース・アプローチ:現在の適応能力を測定して、そこから気候変動シナリへの弱点を探る
  4. 政策ベース・アプローチ:気候変動下の政策を検証する。



この4点は似ているようで、違っている。まず、国連の定義では、脆弱性とは、災害に対する露出と適応能力のコンビネーションによって定められるとしている。1と3では、脆弱性と言っても、それぞれこのコンビネーションの片方に軸が乗っていることになる。それから、脆弱性も現在の脆弱性と将来の脆弱性を分けて考えられる。このレポートを読む限り、2は現在と将来の脆弱性を分けて考えていないようだが、本来分けるべきであろう。このレポートはこの4つのうちのどれかに焦点を当てて書かれていないが、開発を中心に考えてあるので、リストの下の方のアプローチに合わせて書いてあると考えられる。


気候変動を開発プロジェクトにメインストリーミング化する流れの話なので、ツールの必然的に開発問題に合った物になる。この6ステップのサイクルで中心となるステップ2(個人的感想)では、開発プロジェクトで使われる因果関係分析が行われる。各国色々違いがあるが、大体に多様な分析方法となり、下記のようなグラフが出来上がる。



木グラフの下の要因が上の問題要因の原因に成っている事を示している。そして、右のグラフでは細分化された要因群を、グループ化することに問題を整理している。この木グラフは因果関係に基づいているので、全ての関係はQ&Aの方針で説明できないとおかしい。

このステップ2ができたら、後は肉付けの作業である。ステップ6のチェックリスト以外は、その後実用的な方法論も出てこない。まだ、適応策の分析方法が画一されていないので、国連開発プログラムが開発プロジェクト手法を適応策の評価手法として明確化したのは意味があるだろう。ただ、開発プロジェクトも評価も因果関係分析では、包括的に問題を捉えられないとか、ダイナミックに問題を見れないなどの批判もあるので、因果関係分析で画一される事もないだろう。

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