2013年1月24日木曜日

成功した農民が脆弱になる可能性:バリでの脆弱性のサイドストーリー ~Successful farmers may become vulnerable: A side story of vulnerability in Bali~


インドネシアのプロジェクトでニュースレターを半年ごとに出してます。そして、そのニュースレターに、「成功した農民が脆弱になる可能性:バリでの脆弱性のサイドストーリー」という英文の記事を書きました。日本語に翻訳して、内容を乗せます。


オリジナルの英語版は最後に載せてあります。

成功した農民が脆弱になる可能性:バリでの脆弱性のサイドストーリー

高間 剛博士(長期専門家)







IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が作った最も頻繁に引用された脆弱性の定義があります。「脆弱性とは、気候変動性と極端現象を含む、システムに影響を受けやすい程度、気候変動の悪影響度、対処することができない程度」。 大規模な気候と社会経済的脆弱性は、インドネシアなどの発展途上国における人口の大部分を占める貧しい農民の窮状を悪化させる可能性があり、これは当面の状況であり続けるでしょう。しかし、成功した農民も、気候変動に脆弱である可能性の例を、今回示そうと思います。


サブプロジェクトチームは、水田の生産と、気候変動の認識と気候影響の相関を評価したとき、興味深い傾向を発見しました。洪水の様な気候変動に関連する災害や、稲作への品質と生産量への影響を認識していない農家は、他の農家より稲作の生産が良くないことが、統計的に95%当たっていると言えます。例えば、一般的に、気候変動の悪影響を考慮していない農家は、影響を考慮する農民よりエーカー当たり約5キロ以上の稲を生産します。しかし、「気候変動を認識していない事」が、より良い生産をもたらすという意味ではありません。どちらかと言えば、これらの農家はすでに生産性が良い水田を持っているので、 「気候変動を気にしないで良い」のでしょう。言い換えれば、「良好な生産の水田」は、気候変動とその潜在的な影響を、意識しない様にするのかもしれません。


農民の無視する事に影響を与えるかもしれない、別の側面があります。農業普及員は、新しい技術を教えたり、情報を提供することにより、農家の生産を助けます。プロジェクトの評価結果から、農業普及員から訓練を受けた農家は、稲作の生産性が12%上昇する可能性があることを示しています。これはエーカー当たり4キロの生産性の向上です。


組織と管理の変化より、農業普及員システムの資金調達や規定の制定は、弱体化されているとも言われています。現時点で、農業普及システムは均一ではありません。たとえば、2560名の普及員(総数の6%)だけが学士号を保持し、その他はそれ以下の資格しか保持していません。農業普及システムは、水田の生産に重要な役割を担っており、質が下落すると、生産性も低下する可能性があります。


この2つ目の話は、最初の「気候変動の影響を無視している農民」の話と関連しています。気候を無視している農民たちは今は良い生産性で浮かれているが、気候変動の悪化し、それらの農家が影響を無視し続けるならば、将来の気候変動の悪影響にうまく対応できないことになるかもしれません。これはそのまま、IPCCの脆弱性の定義です。実際には水田の品質と数量は、気候の変化に影響を受けているので、気候変動とその潜在的な影響を認識していない農家は、他の農家よりも脆弱であると言えます。また、このサブプロジェクトにおける気候変動の評価によると、気候変動がバリで起こっているようです。これらの変更を無視し続ける事は、稲の生産に大きく影響を及ぼす可能性があります。


結論として、現在成功している農家が気候変動の悪影響を無視し続けた場合、脆弱な農民になる事が考えられます。しかし、成功している農家は、改良種子の取得やトラクターの購入ができるので、高い適応能力があると考えられます。その為、これはまだまだサイドストーリーの扱いでしょう。メインストーリーは、やはり、すでに現在の気象に対して脆弱で、気候変動の悪影響にさらに追い打ちをかけられる貧しい農民に焦点を当てるべきです。いずれにしても、農家に正しい気候情報を提供することが重要です。現在の農業普及員システムを強化するのも一つのアプローチです。組織や管理の変化によって、それが困難な場合は、大学、農業企業、NGO、及び農民組織等がより大きな役割を果たす必要があるかもしれません。 インドネシア気象庁の気候フィールドスクールは成功例だとおもいます。私はこのサブプロジェクトが、脆弱な農家を支援するもう一つの良例になると良いなと思っています。




オリジナルの英語の記事はここからです。

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Original English version

Successful farmers may become vulnerable: A side story of vulnerability in Bali
by Dr. Takeshi Takama (Long Term Expert for SP-2)









The IPCC (Intergovernmental Panel on Climate Change) gives the most frequently quoted definition of vulnerability: “Vulnerability is the degree to which a system is susceptible to, and unable to cope with, adverse effects of climate change, including climate variability and extremes.” Extensive climatic and socio-economic vulnerability may worsen the plight of poor farmers who comprise the majority of rural populations in developing countries, including Indonesia, and this will continue to be the case in the immediate future. However, I will offer an example here that shows how successful farmers can also be vulnerable because of climate change.




When the Sub-Project Team assessed the correlation between rice paddy production and the perception of climate change and climatic impacts, we found an interesting trend. Farmers who do not perceive as related to climate change extreme events like flooding and their effects on paddy qualities and quantities have better production than other farmers, with a 95 percent statistical significance. For example, generally, farmers who do not consider the adverse effects of climate change produce about 5kg of rice paddy per acre more than farmers who consider the effects. However, this does not mean “no perception of climate change” results in better rice paddy production. Instead, these farmers already have better rice paddy production; therefore, they are likely to “not care about climate change.” In other words, “good rice paddy production” makes these farmers ignorant about climate change and its potential impact.



There is another aspect concerning what may affect farmers’ ignorance. An agricultural extension worker has a significant role in helping farmers’ productivity by teaching new technology and offering information. Our preliminary results show that a farmer who has received training from an agricultural extension worker is likely to increase their rice paddy production by 4kg per acre, which is a 12 percent gain in productivity.



Some say that the agricultural extension worker system has been weakened due to institutional and management changes such as funding responsibility and provision of services. At the present time, the agricultural extension system is not uniform. For example, only 2,560 extension workers or 6 percent of the total number hold bachelor’s degrees, and the rest hold lower qualifications. The agricultural extension system has a significant role to play in rice paddy production, and if the system declines, productivity may also decline.


The second story may be related to the first story, i.e., farmers ignoring the effects of climate change. The climate-ignorant farmers enjoy good productivity now, but if impacts from climate change worsen and farmers continue to ignore them, these farmers may not cope well with the adverse effects of climate change in the future. This is actually the definition of vulnerability from IPCC. The farmers who do not perceive climate change and its potential impact can be more vulnerable than other farmers, as the actual paddy qualities and quantities are affected by the change in climate. Also based on climate change assessment in this Sub-Project, climate change seems to be happening in Bali. Ignoring these changes may affect rice paddy production significantly for these uninformed farmers.


In conclusion, if currently successful farmers ignore the adverse effects of climate change, they may become vulnerable farmers. However, this is still a side story, as these farmers have higher adaptive capacity, such as access to better seeds, agricultural machines, financial resources, etc. The main story should focus on the already-poor farmers, as they are vulnerable to the current climate, and the adverse effects of climate change will hit them harder. In either case, it is important to provide correct climate information to farmers. Strengthening the current extension system is one approach. If that is difficult due to the change in institution and management, other players such as universities, agro-businesses, NGOs, and farmers’ organizations may need to play a greater role. BMKG’s climate field school is a successful example. I hope this Sub-Project becomes another good example to help vulnerable farmers in Indonesia.

2013年1月6日日曜日

サスティナブル(木製・空洞)サーフボードのVINCE SURFBOARDSを見学 ~ライフスタイルのサーフィンにどうですか?~





フランス人で変わったサーフボードを作っているヴィンスさんと知り合いになった。私が環境関連の仕事をしていると知って、何度も「私のサステイナブル(持続可能)なサーフボードの工場に来てください。」とお誘いを受けていたので、子供の社会見学を兼ねて見に行って来ました。




普通のサーフボードは、フォームと言われるポリエステル等の石油を原料とした発砲素材を、ガラス繊維とプラスチック樹脂で包んで作ります。サーフボードの生産量は他の工業製品と比べて少ないので、サーフボードの石油使用量は、社会や環境の大きな問題では無いと思います。しかし、ヴィンスさんは、出来るだけ「サステイナブル(持続可能)なサーフボード」を作りたいとのことで、石油を原料としたフォーム素材は使わないとのことです。

そして、彼はバルサとチークの木材を素材として、船を作るようにサーフボードを作ることにしました。だから、彼のサーフボードは格子で組んであり、中は空洞です。






ほら、ぽっかりと穴が空いていますよね。



ロッカーと言われるサーフボードの反りも、この通り綺麗にできています。このサーフボードの部品を持っているのがヴィンスさんです。この組はバルサ材で出来ているので、ビックリするぐらい軽いです。



わかりにくいですが、下の写真の様に、組んでいるようです。





この様に、木材を組んで作るサーフボードは環境面やサスティナブルでいくつかの利点が考えられます。


  1. 石油製品の消費を減らせる。
  2. 折れにくいので、長持ちする。
  3. 長持ちする木材製品にすることで、二酸化炭素を固体化しておける。
  4. インドネシア国内で素材を生産でき、輸送距離をへらし、地元への仕事ができる。
  5. 廃棄物を肥料などに二次利用できる。


4番の「素材の生産」は、工場の脇でバルサの木の苗が作られていました。大きくなったら別の場所に移して、5年でサーフボードの素材として使用できるようになるそうです。




5番の「廃棄物」ですと、下記の様に、廃材から肥料を作っていました。






その肥料を元に、工場の脇でトマトやパパイヤを作っていました。これらが巡り巡って、チキンになって、それを従業員が家に持って帰って、夕食になったりしているそうです。私も、帰りに幾つかのトマトをパパイヤの鉢植えを貰って来ました。







サーフボード作成の話に戻しましょう。






天然素材を使っているので、クオリティーコントロールが大変のようです。木材のストックを見ると家具工場のようです。ここから、余り重くない木材を使って、サーフボードを生産します。規定より重くなったボードは、出荷されません。





サーフボードが組まれた後は、普通のサーフボードの様に、シェイピング(削り出し)が行われ、サーフボードの形になります。



ヴィンスさんは「最新のシェイピング・マシーンで削っているよ」っと言っていましたが、「最新のシェイピング・マシーン」のはずのインドネシア人は、丁度昼ごはんに出かけていたようです。



その後、ラミネートされ木目が美しいサーフボードが出来上がります。








カイトサーフィン様のサーフボードはウエイクボードの様に、浮力がそれほど要らないので、格子を組んで、空洞を作らないようです。






こんな、サスティナブルなサーフボードをどう思いますか?


パタゴニアの創業者であるイヴォン・シュイナード氏も「社員をサーフィンに行かせよう―パタゴニア創業者の経営論」に書いていましたが、サーファーにとって耐久性や環境問題は、サーフボードを購入する時の一般的は重要点ではないでしょう。シェイピングのデザインや軽さ等の方が重要でしょう。私も実はそう思っている方です。

もちろん、ヴィンスさんはデザインやクオリティーには、自信を持っていますので、こんな事を書くのは失礼かもしれません。

しかし、サーフィンをスポーツと考えることから、一歩後ろに下がると、ヴィンスさんの「ちょっと重いけど、環境にやさしいかもしれないサーフボード」を、自然に受け入れることが出来るかもしれません。

老年サーファーのデーブが、最近こんな事を言っていました。

  • サーフィンはただのライフスタイルだったな~。
  • そして、サーフィンはいつからか、スポーツになって、
  • 今では、サーフィンはビジネスだよ。


「ビジネスのサーフィン」も「スポーツのサーフィン」も悪くありません。ただ、一歩下がって自然と戯れるサーフィン文化をライフスタイルと捉えたら、デザインにカリカリする事もないでしょう。



興味がある方は、ここから注文してはいかがでしょうか。

VINCE Wooden Hollow SURFBOARDS


それから、VinceサーフボードのFacebookもあります。





内緒ですが、ロングボードやフィッシュボードが欲しいです。

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