2009年7月4日土曜日

気候変動のコスト(費用)とは?

あしたから、また東京に出張で欧州と日本の気候変動のプロジェクトの共同会議に出席する。

僕が説明するのはClimateCostというプロジェクト:




このプロジェクトは統一のシナリオと分析フレームワーク内でトップ・ダウンとボトム・アップから気候変動のコスト(費用)とインパクトを分析するつもりだ。最終的には非集計的なアウトプットを出す予定である。

まずは気候変動のコスト(費用)の定義は以下の様になっている:

  • 気候変動の全体コスト= 緩和策(CO2削減)のコスト - 補助的な利益 + 適応策のコスト + 残った社会的コスト
そして、「残った社会的コスト」とは:

  • 残った社会的コスト = 全体的な社会的コスト (行動を起こさなかったコスト) - 緩和策の利益 - 適応策の利益
まず、気候変動には二酸化炭素の削減(緩和策)だけでなく、気候変動が起こってしまった世界に「適応」するために
コストがあることに気付かなくていけない。それと同時に、気候変動はに「緩和策」を「適応策」によって対応することよって利益も出ることである。それから、補助的な利益 (ancillary benefits)とは二酸化炭素の削減と同時に大気汚染が減る事によって起こる利益。これは短期的な利益であるが、気候変動の研究ではあまり考慮されていない利益である。



これらのコストを算出する方法はいろいろあるだろうが、このプロジェクトでは下から積み上げていくようなアプローチが有効と考えている。そのときにいくつか注意しなくてはいけない事がある:

  • 日本政府も押している「セクター別のアプローチ」であるが、既存のプロジェクトなどは同じシナリオを使っていないものが多く、それではセクター間を比べる事がむずかしい。それから、きちんと何が気候変動のコストで、何が社会経済活動からでたコストなのか分けて考えていないのも問題である。これらの統括したデーターベースは今のところ存在しない。
  • 現在の統合的な分析モデルは、貨幣価値だけでしかアウトプットを出していないが、物理的な単位でインパクトを提示する必要がある。さらに、特に適応策のインパクトはシンプルすぎる傾向がある。特に分析がマクロレベルに振られすぎている。適応策はもっとローカルな問題なので、政策に有効利用しようとした場合ギャップが出てくる。
  • 多くの分析はカタストロフィックな「極端な出来事」のコストを計上していない。
  • 経済的なコストの分析も、まずそれはトータル・コストや平均コストなどである。経済学的に一番重要な限界コストの算出がなされていない。

それから、今までコストが分析されてエリアに注目してみると、このプロジェクトの狙いが定かになる。

     (コストが発生する範囲)
市場 市場以外 社会的に悲惨な事
(気候変動 -------------
 の範囲)
予測できる  | 限定的 限定的 無し 

限定的    | 限定的 限定的 無し

大規模な  | 少数 無し 無し
変化


この表は過去の機構変更のコストが調べられた分布を表している。ほとんどのプロジェクトが市場でのコストしか計測していないし、計測した事柄も、気温の上昇や海面上昇などのある程度予測できる部分に限られている。降雨量やハリケーンなどの予測が「限定的」な部分になると、予測はさらに少なくなる。そして、予測のレベルが、海流の変化などの大幅な物になったばあい、ほとんどコストの分析はされていない。つまり、右下に行けば行くほど、コストの分析は難しくなる。

このプロジェクトで出来るだけ、この空いている予測を埋めるつもりである。そのためには、既存の費用便益分析だけでなく、もっと環境のリスクに配慮した分析方法やもう少しソフトな社会的分析も必要になるだろう。



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