2009年6月20日土曜日

「間違った認識フレーム」と意識調査

今回の短いストックホルムの滞在も終わってしまった。夏に来る分には楽しい場所だ。前回4月の頭にきたときは、まだ雪が残っていたのでたまらない。

今回、ストックホルムにきた理由のひとつは生徒に行動経済学のひとつである「選択」による経済分析をおしえるため。もともとは、McFaddenが200年のノーベル経済学賞と取った交通分析に使われていた手法だが、今は交通だけでなくマーケティング、医学、環境の分野でも使われている。

メインにおしえたのはこの分析だが、トバレスキーとカーネマンがノーベル経済学賞を取った話もまぜたが、これが結構受けが良かった。

マクファデンの「選択」の話はもちろん、経済学の合理化ができている人間の話で、トバレスキーとカーネマンの話は合理化できていないとどうなのかといった話である。

これは実際にトバレスキーとカーネマンが使った例である。

二つのくじがあるとする。




一つ目のくじ引きで「当り」と「はずれ」を引く確率は以下のとうりである。

「くじ1」
確率カクリツ (白)90%(赤)6%(緑)1%(青)1%(黄色)2%
支払シハラい $0   +$45  +$30   -$15   -$15

もうひとつのくじの「当り」と「はずれ」の確率は以下とする。

「くじ2」
確率カクリツ (白)90%(赤)6%(緑)1%(青)1%(黄色)2%
支払シハラい $0   +$45  +$30   -$10   -$15

どちらのくじを引くほうが良いであろう。

答えは簡単で「くじ2」だ。青玉を引く以外、結果は同じで青玉を引いた場合、二つ目の結果のほうがましである。


それでは、次の場合はどうだろう:

「くじ3」
確率カクリツ (白)90%(赤)6%(緑)1%(黄色)3%
支払シハラい $0   +$45  +$30   -$15

「くじ4」
確率カクリツ (白)90%(赤)7%(緑)1%(黄色)2%
支払シハラい $0   +$45  -$10   -$15

20秒ほどで判断すると・・・・・。



「くじ3」と答える人が多い。実際は「くじ4」である。最悪「-$15」と最高「+$45」な状況は、共におなじである。それでは期待される結果はというと、確率×支払いの合計で、「くじ4」である。

なぜ間違った判断を下すかというと、「くじ4」は損する玉が2種類あることに惑わされるのだ。つまり、「間違った認識フレーム」が合理的な意思決定を妨げる結果になってしまっている。

これはアンケート調査をするときでもおなじである。複雑な様式では「間違った認識フレーム」を作ることになるので、時として正しい意識調査ができない。

個人的にはこのような事に時間を割いて、質の良いデータを得ることのほうがモデル化に時間を割くより大事だと思っている。

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