2012年7月26日木曜日

気候変動がインドネシアの稲作に与える影響―脆弱性という考え方(1) ~気候変動の基礎~

あまり、日本語でセミナーをする事もないし、PPTを簡単に画像ファイルに変換できることもわかましたので、今月日本に一時帰国したときに、講演した内容を複数回に分けて書いてみます。

写真は基本的に自分で撮影したものですが、グラフト等は他のサイトから拝借したものがあります。分かる範囲で、リンクを載せます。




気候変動の基礎


初めに気候変動の基礎の説明を行いました。まず、気候と天気の違いを考えるには、以下の動画がわかりやすいです。犬のジグザグした動きが天気で、犬と散歩をしている人の動きが気候です。毎日の天気は犬の動きの様に頻繁に変動しますが、気候はこの人の足跡の様に安定しています。しかし、方向転換することだったもちろん有るわけです。



気候システムに変化をもたらす(強制)要因はいくつかありますが、地球エネルギーの収支は基本的にはバランスがとれています。地球の大気に入るエネルギーの総量はおよそ170ペタワットで、その太陽エネルギーの3割はそのまま、宇宙に反射放出され、残りの7割は地球に吸収されます(51%は大地、残りは大気及び雲)。しかし、吸収されたエネルギーもやがて、赤外線(熱)として宇宙に戻ることになります。得るエネルギーが失うエネルギーより大きければ、気温や海面温度が上昇することになります。

Wikipedia:地球のエネルギー収支


気候変動を起こす強制要因は、太陽活動の変化、大気の水分量の変化、大地の変化、地球の公転や地軸の変化、二酸化炭素(CO2)を含めた温室効果ガスの変化などがあります。大気中の温室効果ガスの濃度は、産業時代から上昇しており、その最大の要因は、交通、産業、加熱と冷却に使用される化石燃料の燃焼に由来します。数世紀にもわたって化石燃料から排出されたCO2、CH4、N2O等の温室効果ガスの放出により、気候変動を起こす強制力が増加してきました。特に、過去40年間の温室効果ガスの放出速度は、過去2千年と比べて、6倍の速さで増加しています。1750年以降の太陽活動の変化は+0.12 W/m2と言われており、同期間の人為的な温室効果ガスへの放射強制力が+ 1.6 W/m2である事を考えると、太陽の活動の変化は重要ではありません。また、最大の強制力を持つ温室効果ガスの水蒸気も、それ自体が温暖化の引き金でなく、他の強制要因が起こした温暖化の乗数効果です。その他、長期的には大陸の移動、短期的には土地利用の変化も、それぞれ地球規模・地域の気候変化に影響を及ぼします。そして、過去の気候変動は、樹木の年輪幅、海底の花粉化石の変化、極地の氷に閉じ込められていた酸素や炭素を調べることで確認されています。その結果、過去150年間の観測により、地球の表面温度は毎10年で0.05度上昇していることが分かりました。特に、過去25年間では毎10年で0.18度にのぼる急激な温度上昇になっています。


IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第四次報告書は、21世紀の地球の平均温度の上昇範囲を、グローバル経済の発展と技術変化に基づいて予測しています。二酸化炭素の排出が年率約3パーセントで増加している現時点でのシナリオでは、2100年までに4度の気温の上昇が予想されています。IPCCは平均気温を最大2度の上昇で抑えたいと考えていますが、それは温室効果ガスの排出を半分にしても不可能なシナリオです。その他、大気中のCO2濃度の変化にはタイムラグがある事も考慮する必要があります。本プロジェクトのバリ島でも、今世紀の中頃までには、平均気温が2度上昇すると考えられています。



その為、気候変動を起こす強制要因の温室効果ガスを減らす対応だけでなく、気候変動が起こってしまった世界に対応する対策が必要になってきます。温室効果ガスの削減による気候変動への対策を緩和策と呼び、再生可能エネルギーへの転換などが含まれています。一方、気候変動によって引き起こされた災害等への対応を適応策と呼びます。そして、適応策を決める上で、どの様な活動又は地域が気候変動から被害を受けやすく、被害に対応できないか正しく把握する必要があります。この被害を受けやすい状態を脆弱性と呼び、その評価能力を強化するために、JICAは「気候変動対策能力強化プロジェクト サブプロジェクト2脆弱性評価」をインドネシア政府と実施しています。














後ほど、続きを書きますね。




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